君のブログに恋をして〜プロローグ編

その男は転々と職を変えていた。
飽き性なのか、単に堪え性がないだけなのか。

それは高校時代に遡る。
良くも悪くもない地元の高校で、良くも悪くもない成績をひっさげて、うだうだと面白みもない時間だけを過ごしていた。
男の地元は都会から電車で1時間半ほどの田園風景が広がる片田舎であった。
男はそこで生まれ育った。

男はその頃、流行っていた尾崎豊の曲に心を奪われいった。
母親にねだって買ってもらったガンダムのフィギュアを握りしめながら、夜中に教室の窓ガラスを割り、壊れたバイクを乗りまわす、そんな自分を夢見ていた。
学校では目立つほうではなかった。
むしろ陰キャラと呼ばれる部類で、そこから脱出することもできず、悶々とした高校時代を過ごしていた。

長子として生まれた男は、母親に溺愛され育った。
それによって男は無意味な自尊心と無駄な見栄で形成されていった。

あるとき、こんな事件がおきた。
男の自宅に珍しく友だち数名が遊びにきた。
その友だちが帰っていったあと、当時、一緒に住んでいた祖父の財布がなくなったのだ。
小遣い欲しさに男が企だてことで、友だちを犯人に仕立てあげたのだ。
祖父からは「二度とあの友だちとは遊ぶな」と注意を受けるだけで終わった。
男の人生を狂わせる序章となる出来事であった。
それを知るのは20年以上も月日を重ねてからになる。

そんな鬱々とした高校時代では受験勉強にも身が入るわけもなく、志望した大学の合格通知を見ることはできなかった。
長子としてのプライドが邪魔をし、滑り止めで受かった大学には行かず、浪人する道を選んだ。
母親に甘やかされて育った男に過酷な浪人時代を過ごせるわけもなく、勉強もせず言い訳ばかりを考えていた。
結局、2回めの大学受験も失敗に終わった。
現役時代に受かった滑り止めの大学にすら受からないという散々な結果となった。
そして、2回めの浪人時代を迎えた。

地域で一番の私大に身を置いた自分、華々しい成人式のセレモニーに出席という青写真も叶えられることなく、3回めの大学受験も脆く崩れ去った。
高校を卒業して二浪したが、結局のところ大学生にはならず町工場に住み込みとして働くようになった。

町工場の二階に設けられた小さな部屋で、男は幼少の頃から植え付けられた、自尊心を持て余した。
屈折したその思いを胸に沈め、つまらない日常に身を費やしていくのであった。