君のブログに恋をして〜妄想の20代編

2浪して結局のところ大学生にはなれなかった男は、高卒の肩書きにこだわっていた。
自分はこんなところにくすぶっているような人間ではない。
自分にふさわしい場所があるはずだと。
毎夜、町工場の二階で悶々としていた。

その町工場は印刷関係であり、男はオペレーターをやっていた。
学生時代、自分より勉強ができなかったヤツが、大学生活をエンジョイし、女の子と遊びに行く話を聞くたび、やりきれない気持ちになった。
工場とその二階の自室との往復だけが男の人生だった。
息が詰まる思いに、もがいた。
上司には気に入られて、仕事は特に問題なくこなせたが、意味もなく時間を消費していくのに焦りを感じた。

(ここに居てはダメだ)

最初の転職を試みた。
長男として母親に持ち上げられたプライドによって、履歴書の空白期間には適当に色をつけた。
志望大学に二浪して受かったのだが、父親の事業が失敗し、泣く泣く進学を諦めたと、嘘をついたのだ。

2つ目の職場は食料品関係の営業であった。
初めての営業ではあったものの、元来のほら吹きな性格がうまく営業に作用した。
いや、大した技術を身につけることもなく、頼りになるのはデマかせをいう自分の口だけだったのだ。

その頃になると、家庭用パーソナルコンピューターが世に出るようになっていた。
アナログ回線からISDNと移行していく時代であった。
町工場の二階で鬱々と過ごした反動で、残業と称して会社に残っては、会社のPCから出会い系サイトにアクセスした。

初めて風俗店にも足を向けた。
もらったばかりの給料の綺麗なお札を財布に入れた。
ドキドキしながら向かったのだ。
緊張のあまり、その支払いのとき、ピタリとひっついた1万円札を2枚渡してしまった。
家に帰ってから、そのことに気づいた。
支払いは1万円だったのだ。

遊ぶことが面白くなったある日、私用で使った領収書を間違って営業経費として申請してしまった。
会社の経理からは何の疑いも持たれず、お金を手にした。
嘘をつくことになんらためらいを感じないタチの男は、それから何度となく同じことをした。
あまりに度が過ぎたため、そのことが社長の耳に入り、会社は辞めた。

次の職場はなかなか見つからない。
毎夜、出会い系サイトで物色した。
何もかもなかなかうまくいかない。
俺はこのまま20代を終えるのか?
虚しい、男の叫びであった。