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君のブログに恋をして〜誕生編

著者:馬詰道代
公開日:2017/09/23
最終更新日:2017/09/23
カテゴリー:フィクション

初めて出逢う我が子に狂喜した。
念願の男の子が生まれたのだ。
35歳で初産だった妻は産後の肥立ちが芳しくなく、初めての育児によって、よりヒステリックになっていた。
それは元来の我儘な性格を増幅させ、男を苦しめた。

自分たちの家を持ち、念願の男の子にも恵まれた。
外目には幸せを絵に描いたように見えたのだが、男の日々に安堵はなかった。
共働きをしていたときはゆとりもあった暮らしが、自分ひとりにかかってきたのである。
仕事を終えて帰宅しても育児、家事の手伝いを強いられるのだ。
機嫌の良いときは優しい言葉が出る同じ妻とは思えない、罵詈雑言を浴びせられる日もあった。

妻も初めての育児であったが、男も初めての育児であった。
機嫌の良いときの我が子は可愛くて仕方がなかったが、何をしても泣きやまないときは、ほとほと疲れた。
妻には、
「一日中、泣きやまぬ子どもの面倒を見ている身になれ」
と責められた。
仕事と帰宅後の育児と家事、睡眠不足も重なったある日、会社の車で事故を起こしてしまった。
移動中のことだった。
一瞬のことだった。
赤信号で停車する車に後ろからオカマしてしまったのだ。
すぐにブレーキを踏んだが間に合わず、衝撃を受けた。

唯一、不幸中の幸いだったのは、相手も自分も大した怪我を負わなかったことだった。
お互い社用車だったこともあり、会社が契約している保険会社同士と会社で話がついた。
会社からは注意勧告だけで済まされたことに安堵した。
妻には散々詰られてた。
我が子の安らかな寝顔を見ては自分を慰めた。

ただ、この事故によって、会社の居心地にかげりが見えてきた。
息子の成長を見るたびにそのかげりを胸の奥に押しやった。
家のローンを払いながらの暮らしはいっぱいいっぱいだった。

男は弟が3人いた。
妻は妹がいた。
お互い長子として甘やかされて育った。
ローンを払いながらの生活が息苦しくなってきた妻は、男に断りなくパート先を見つけてきた。
息子を預ける保育所も見つかった。
男は何も言えなかった。

何か言うと、何倍にも返ってきた。
「稼ぎが悪いから!」
と、言われたら何も言い返せなかった。

転職を繰り返した男だったが、子どもも生まれ、この会社に腰を落ち着けようと思っていたのだ。
頭ではそう思っていたのだが、心の中にざわざわと波が押し寄せてきた。

また、あの波だ。

嫌なことがあると逃げたくなる。
会社の居心地の悪さが日に日にのしかかってきた。
ここでは自分は大きくなれない!という妄想と自負。
自分を正当化する癖は小学生のときからのものであった。

妻と息子にいい格好を見せたかったのだ。

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