君のブログに恋をして〜家庭内カースト制度編

男が次に選んだ職場は不動産関係であった。
ハローワークで見た求人票の給与に目を引かれたのだ。

幼い息子を保育所に預けるのは不本意であった。
が、男の稼ぎだけでは、家のローンを支払ってしまうと贅沢なことが何もできないのだ。
パート勤めの妻の給与のおかげで、夫婦の見栄を満たすことができた。
少しでも稼ぎが良くならなけばいけない
と、家庭内カースト制度の中での自分の位置を確かめるのであった。
巷で噂される家庭内カースト制度に自分を置き換えて、ため息を吐いた。

新しい仕事は、ハローワークの求人票に提示されていた通りの給与であった。
今までよりかは多額だったので満足だった。
ただ、いくら残業をしても残業代はカウントされなかった。
毎夜、帰りの遅い男に妻はキレた。

仕事帰りに保育所に息子を迎えに行き、買い物をして帰宅している!
休む間もなく、晩ご飯の支度をしている!
毎夜毎夜、帰りが遅いとは何をしているのだ!
と、妻にキレられた。

残業をして帰宅した男は、夜中の洗濯と出勤前の掃除を義務づけられた。
妻が切れたときの暴言を思うと、洗濯も掃除も仕方ないと諦めた。
毎日、帰るときの連絡も義務づけられた。
会社に認められた取引先への接待でお酒を飲み美味しい食事に舌鼓をうつ。
妻の暴言に比べたら、取引先の横柄な態度など微々たるものであった。
妻の前では何を発しても、言い訳としか取られなかった言葉も、取引先が相手ならうまく機能した。
自分の口からのでまかせやおべんちゃらに酔いしれる男であった。
妻の暴言が待っているだけの家に帰るより、取引先との接待が楽しい男であった。

毎夜毎夜の残業に妻の不服は一層膨らんでいった。
男はそれとは別に、上司からの執拗な叱咤や叱責に沸々とした怒りを押し隠していた。
上司の失敗も自分が原因と叱責されるのだ。
取引先へのおべんちゃらがうまく機能しているときは、調子が良かった男だったが、男の一貫性のなさに立て続けにクレームが発生した。
男は参った。

夜、遅く、家に帰って、自分に良く似た息子の寝顔だけが慰めであった。
妻は男に似たヌボーとした表情の息子が時々憎たらしくなった。
十月十日、我が身の中にいた息子の可愛いさは、その歯痒さに押しまかされてしまうときがあった。
それがまた、男への不服へと変わるのであった。
この家で君臨しているのは妻であり、次いで幼い息子。
カースト制度の最下位が定位置として固定された男は、息子の可愛さだけでその位置を受け入れるのであった。

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