君のブログに恋をして〜つかの間の憩い編

不動産の営業にヘトヘトになった。
確かに今までの会社より給与は良かった。
しかし、それ以外にノルマを課せられた。
入社当初は周りも驚くほど成績を上げていたが、なにぶん、丁寧さに欠ける男の営業は得意先からのクレームを目立たせるだけになった。
成績の数の多さに比例するクレームの多さはダントツであった。
得意先からの信頼も失われていく中、こなしていた成績もだんだんと振るわなくなってきた。

いくら残業をしても、みなし残業の給与体系では反映されることはない。
わかって入社したとはいえ、欲深い男はだんだんと我慢ができなくなってきた。
振るわない成績での圧力にも我慢がならなかった。
今までの職場とは比べものにならないほどの罵倒を浴びせられる日もあった。
不動産の営業を甘く見ていた。
男はジレンマに陥っていった。
焦るばかりに失敗を繰り返してしまうのだった。

家に帰るとやっと言葉が出てきた息子の「とーたん」に慰められた。
残業をしてもしなくても給与には影響は出ない。
残業をせずに帰宅した日は、息子の相手もでき、妻に命じられた家事分担も難なくこなせた。
妻の機嫌も良かった。
職場での居心地の悪さを胸の奥に隠して、つかの間の憩いに安堵する男だった。

営業の成績や失敗は、給与には影響されなかったが、賞与査定に影を落とした。
その年の冬の賞与は散々だった。
賞与と呼べるものではなかった。
採用面接での話とは違う待遇に、男は腹を立てた。
残業もほとんどせずに帰宅するようになった男を、要領よく立ち回っているものと思い込んでいた妻も激怒した。
妻のお腹には2人目が入っていたのだ。
2人目とはいえ高齢出産になる妻は、悪阻も酷かった。
精神的にも不安定であった。
すでにパートは辞めていた。

今後、2人の子どもを育てていくことを考えると、会社の待遇に妻は怒りを覚えるばかりだった。
そのほこ先は男に向けられた。
和らいでいた家庭の空気が一変した。
男は妻に追い立てられるまま、賞与査定について上司に不服を申し立てた。
それがより一層職場での居心地を悪くさせた。
営業畑で20年ほど生きてきた。
営業職以外、自分に何ができるのか?
流行りのファイナンシャルプランナーの資格も取ってはみたが、それを活かせる道はなかった。
それなりに営業職への自負もある。

新たなステージに足を踏み入れるべきなのか。
そんな大げさなことを考えてみても、はたからは単に職を転々とする堪え性のない男と映るだけであった。

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