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君のブログに恋をして〜新天地編

著者:馬詰道代
公開日:2017/10/26
最終更新日:2017/10/26
カテゴリー:フィクション

今までと違う営業に戸惑いながら、なかなか成績を出せずにいた。
男の何度めかの転職先は小さなソフトハウスであった。
代表兼営業を務める上司とパートの事務員という小さな会社で、将来性に不安はあるものの、居心地はすこぶる良かった。
ソフトハウスと言えば聞こえはいいが、自社でソフトウェア開発をおこなうより、他社のエンジニアを他社に紹介する、いわゆる派遣業的意味合いの強い会社であった。

転職した当初はIT業界特有の営業感覚がなかなか掴めずにいた。
しかし、同業他社の営業と交流しながら、協業していくという中で、徐々に感覚を掴んでいった。

会社のwebサイトにあるブログに記事を投稿するというのも、仕事のひとつであった。
今までインターネットは、ネットサーフィンをするぐらいの男にとって、自ら何かを発信するということに、戸惑いながらも興奮を覚えるのであった。
仕事に関係することに限らず、どんなことを書いてもいいという指示で、自宅の薔薇の木の写真を載せてみたりもした。
不動産の営業に比べたら、ゆるすぎる営業であった。
直行直帰も自己申告で済む状況は、男にとってありがたかった。

身重の妻の体調が優れないときには、息子を保育所に連れて行くのは男の仕事であった。
2人めとはいえ、40歳での出産になる妻は体調不良を訴えることが多かったのだ。
家のローンも抱えて、2人めの子どもを迎える状況で、家計はかなり苦しかった。
男は決まった小遣いをもらうことさえできずにいた。
900円の整髪料一つでさえ、領収書を妻に見せなければならなかった。

男は自分が好きに使えるお金を得るため、会社が休みの土日にはインターネット回線のセールスバイトを始めた。
大型スーパーマーケットの店先で道行く人にチラシを配った。
なかなか成果はあげれなかったが、時間給精算で幾らかの自由になるお金を手にすることができた。
ただし、そのうちの幾らかは、容赦なく妻に吸い取られていった。
それでも、いちいち領収書を見せることなく使えるお金を持つことはこの上ない喜びであった。

40歳を超えて1万円の小遣いも与えられない男であった。
副業をしていることは会社には内緒であった。
会社が休みの日でなんら迷惑をかけていないと、自らを正当化していくのだ。

あるとき、男が書いたブログ記事に反応があった。
会社のアドレスにメールが来たのだ。
エンジニアである。
男は興奮した。

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