君のブログに恋をして〜12月の風編

12月も半ばを過ぎると年末の挨拶回りが営業の仕事となる。
街中がクリスマスのイルミネーションに彩られ、誰もが浮き足立つ。

急に寒くなったのが堪えたのか、飼っている猫の具合が悪くなった。
妻に頼まれ、猫を病院に連れて行くことになった。
男は半日有給の申請した。

「午後からは挨拶回りをしてから、夕方、会社に出てくるかも」と、
男は事務員に伝えた。
営業という仕事柄、直行直帰を言い訳に会社に顔を出さずに一日を終えることも可能なのだ。
その日、男は午前中に猫を病院に連れて行き、妻には診断の結果と今から仕事に行くと連絡をした。

「さて、とりあえず、年末の挨拶を一件こなし、あとは湖のほとりにでも行くかな」

湖のほとりまで30分ほどの街中にある業者に挨拶回りをして、そのまま足を延ばすつもりで、この日の営業場所を選んでいたのである。
会社の事務員には、”会社に出てくるかも”と誤魔化したのもこのためだ。
男のこの日のメインは湖のほとりの例の場所で愉しむことであった。

男はスマホからそのソープのウェブサイトにアクセスした。
お気に入りのツナギちゃんの出勤時間を確かめ予約した。
午後一番に挨拶回りを終え、その足で迎えばちょうどいい。
クリスマスで浮き足立つ街中で男も浮き足立った。
妻への日頃の鬱憤ばらしである。
何も知らない妻と何も知らない事務員は、男が仕事中にソープに行っているとは夢にも思わなかった。

“ひと仕事”を終えた男の頬を湖のほとりの冷たい風がかすめていく。
夕方に一つ、面談を設定していたのを思い出した。
東の海システム会社の仕事である。
このまま夜の街に身を任せたい衝動を抑えながら、電車に飛び乗った。
東の海システム会社の仕事のおかげでツナギちゃんに会えるのである。
ないがしろには出来ない。

会社のある街まで1時間弱、電車の中で男はかるてるの営業マンとLINEのやり取りで時間を潰した。
外向きには真面目な営業マンを演じている、かるてるの営業マンもこの男とのLINEでは素の自分をさらけ出していた。
お互いに”類ば友を呼ぶ”を実感しながら、妻の悪口や同業他社の営業仲間を挙げ連ね、笑いのタネにして楽しんでいた。

結局、この日は会社のそばまで来ていながら他社の仕事をして、会社に顔を出すことはなかった。
いつものように妻へ今から帰るLINEを入れて帰路についた。
何もかもがうまく回っている錯覚に男は安堵し、帰りの電車で眠りこけるのであった。