君のブログに恋をして〜ピンクの領収書編

東の海システム会社は主に受託案件を回している。
そこに身を置く例のエンジニア、東の海システム会社から営業支援を受け取る男。
男はそのエンジニアと東の海システム会社の営業を連れて、例のちゃんこ鍋屋のおにぎりに頻繁に出入りするようになった。
家に帰っても暴君な妻に虐げられるだけなのだ。
おにぎりに行けば、好みのママさんが優しく相手をしてくれる。
名前を、”ちゃん付け”で呼んでくれるのである。
それが心地よかった。
ママさんとのLINEのやり取りもまた楽しかった。

湖のほとりに行くのも楽しかったが、二十歳過ぎの女の子相手では得られない、心地よさがこのおにぎりのママさんにはあった。
浅はかな男は自分だけに優しくしてくれていると勘違いするときがあった。
バカである。
調子に乗った男はママさんにある提案をした。
「白紙の領収書が欲しい」とお願いしたのだ。
ママさんは心良く了承してくれた。
男は自分だけの特別感に喜んだ。
男はおにぎりの店名のゴム判だけが押された領収書をもらう。
それに会社名と日付と金額を自分で書いた。
あのエンジニアと東の海システム会社の営業をおにぎりに連れて行き、我が物顔にふるまう快感が嬉しかった。
その領収書は当然のように会社の経理に回した。

ちゃんこ鍋屋おにぎりのピンク色の領収証が頻繁に回ってくるようになった。
あるとき、領収証を綴るスクラップブック見開きに、そのピンクの領収証が3枚並んだ。
それを見た事務員は吐き気を催した。
男が信者となっているエンジニアによる売り上げ、また東の海システム会社の売り上げがピンクの領収書の数に比例して上がっていくなら納得もできるであろう。
単に私欲のために使っているだけである。

事務員はスクラップブック見開きに並んだ3枚の領収書を見て、あることに気づいた。
社名と日付と金額が癖のある男の字に似ているのである。
お世辞にも綺麗とは言い難い字である。
古いスクラップブックを調べてみた。
おにぎりの領収書の字体があるときから変わっているのである。
これは流石に見過ごすわけにはいかなかった。
事務員は思案した。

その夕方、また、男がピンクの領収書を回してきた。
日付を見ると、その日の日付だった。
「これって、今日の日付やけど、ランチ?」
「あっ、書き間違えた」と、男の小声が耳に入る。
「新しいのをもらってきます」と男は応えた。

その2日後に男は領収書を2枚回してきた。
この日の分と新しい領収書を発行してもらうためにエンジニアを連れておにぎりに行った領収書である。
事務員の予想通りの行動であった。

事務員の中で男の悪事がひとつカウントされた瞬間であった。

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