君のブログに恋をして〜不正領収書編 其の一

ある日、男は新しく入社した社員の歓迎会と称して、皆を連れて近くの居酒屋corocoroに繰り出して行った。
居酒屋corocoroは男の会社の行きつけのお店であった。
店長ともすっかり顔なじみになっていた。
男はよく歓迎会と称して費用の仮払いを申し出ていたのに、このときはなぜか仮払いの申し出はなかった。
事務員は不思議に思っていた。

翌日、男は28,000円の領収書を回してきた。
(あぁ、やっぱり・・)
事務員は独りごちた。
が、なぜか腑に落ちない感じにモヤモヤとした。

男が28,000円もの大金を立て替えられるはずがない。
事務員は不思議でならなかった。
確かに男は会社に内緒で東の海システム会社での営業を支援していた。
そのことを事務員は知らない。
ちゃんこ鍋屋おにぎりのピンクの領収書に吐き気を催したときから、男が出す領収書には神経質になっていた。

事務員は思い出した。
男による社内改革として事務所内の物品をいろいろ買い替えられた。
セキュリティ強化のために取り付けていた内ドアの鍵。
男の指示で買ったカードキーである。
男はその仕様が気に入らないと3ヶ月もしないうちに新しいカードキーに買い替えたのである。
事務員はそれがどうも納得できなかった。
事務員はこのとき、男の経費の扱いの雑さを感じたのだ。
それがずっと心の奥に引っかかっていた。

それ以外にも男は何かと大手電機屋に行きたがった。
そのお店のポイント目当てである。
一度、男はその電機屋に入社したばかりの社員を連れて行ったことがある。
男は手持ちのお金がないからと、その社員に自身のクレジットカードでの支払いを打診してきた。
社員は会社のものを買うのに自身のクレジットカードで支払うべきではないと断った。
仕方なく男は自分のクレジットカードで支払った。
事務員はこの社員からその話を聞いていた。

男は本来、クレジットカードを使うときは先に妻にお伺いを立てなければならなかったのだ。
1000円以上のものを買うときには、先に妻に申請するルールになっていた。
事後報告で許されるのは、あの900円の整髪料ぐらいなのだ。
勝手なことをするとどれほどの罵倒が飛んでくるのか。
想像するとその面倒くささに辟易した。
一般の営業マンは営業経費を会社に申請するのが面倒だからと、ポケットマネーで賄うものだか、男は自身の小遣いの使途を妻に申請しなければならないのが鬱陶しかった。
その反動なのか、男は会社の経費を思うままに使うようになっていった。

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