君のブログに恋をして〜不正領収書編 其の二

事務員は28,000円の領収書が回ってきたとき、とりあえずは額面通りの金額を男に支払った。
支払ったものの何かすっきりしないものを感じていた。
胸のモヤモヤを持て余しながら、領収書の裏に書かれている参加者の名前をジッと眺めた。

同じ社内で働く人間をお金のことで疑うことはしたくなかった。
ピンクの領収書に次いでこの領収書。
そのときに参加した社員に状況を聞くべきか思案した。
このモヤモヤをスッキリさせたいと、思い切って一人の社員に確認してみた。

「この前のcorocoro、お金ってどうした?」
「あれは割り勘っすよ。ひとり5,000円ずつの割り勘っす」
「えっ、あっ、そう・・」

事務員のモヤモヤはこれだったのだ。
男はひとり5,000円ずつ会費を集め、それで支払ったあと、領収書を経理である事務員に回してきたのだ。
これは横領?
それとも詐欺?
事務員はさらに困惑した。

領収書を綴っているスクラップブックを開き過去に遡ってみた。
あのちゃんこ鍋屋おにぎりのピンクの領収書の、途中から変わった字体。
男の「書き間違えた」という言葉も聞き逃さなかった。
あれは不正領収書である。
今回の28,000円の領収書の筆跡は男のものではなかったが、明らかな不正領収書である。

代表に報告すべきか思案した。
お金のことである。
放っておくと止めどがなくなるであろう。
かと言って現時点で決めつけるのは早計すぎないか?
単に魔が差してだけかもしれない。
だが、割り勘にしながら領収書を回してくる、その行動には悪意と嫌悪感しか感じられない。
こんなことが平気でできる男に不信感しか持てない。
事務員はその領収書の裏に記入されている名前を見ていた。
もう一度、別の社員にも確かめることにした。

案の定、同じ答えが返ってきた。
男は紛れもなく不正領収書を回してきたのだ。
何食わぬ顔で会社のお金を自分のポケットにしまい込んだのである。
犯罪である。

事務員は代表に相談した。
男には家庭がある。
なるべくなら事を荒だてず、自ら反省し改善する方向に持っていくことになった。
経費については申請制を導入することにした。

会社の経費も申請制に変わり、男は不服そうな顔でふくれた。
ここに入社して、会社のお金を自分の思うように動かせる状況の下、情報交換と称して毎夜のように飲み歩いていたのだ。
機嫌を損ねると包丁を飛ばしてくる妻が眠りについてから家に帰りたかった男にはそれが当たり前のようになっていたのた。。
それが思うようにできなくなったのである。
男は面白くなかった。