君のブログに恋をして〜疫病神編

何においても人のせいにしてきた人生を歩んできた男である。
会社の温情に気づく術を持ち合わせてはいなかった。

「あぁ、めんどくさっ」

机につかえるほど膨らんだお腹を突き出し、事務員に聞こえよがしに言うのである。
経費申請をだす面倒くささから、男が回してくる領収書の数は多少は減っていた。
多少である。
全く反省の色が見えない男である。
事務員は辟易とした。

男のお気に入りのママさんがいる、あのちゃんこ鍋屋おにぎりのピンクの領収書が回ってくる回数も多少はすくなくなった。
そのピンクの領収書の裏には相変わらず教祖のように崇めているエンジニアの名前が書かれている。
このエンジニアにどれだけ会社が恩恵にあずかっているというのだ!
恩恵にあずかるどころか男の指示で特別待遇を強いられていたのである。
事務員はエンジニアとそのエンジニアを特別扱いする男によって、会社を思うままに操られるのではと危機感を感じだした。
事務員は怒りを覚えた。

男は事務員を恨んだ。
この事務員のせいで自由にお金を使えなくなったのだ。
俺は何も悪くない。
営業というのは、お互いお酒を飲み交わし、その人となりを知り仕事に発展させるものなのだ。
あの事務員はそんなこともわからず、俺の仕事の邪魔をしやがる。
この会社は俺でもっているようなものなのに。

男は、あの鬼のような妻が待つ自宅にまっすぐ帰りたくない一心で、「めんどくさっ」と愚痴りながら申請書の殴り書きを繰り返していた。

態度をあらためる様子が全くない男に事務員はほとほと呆れた。
男が入社したときからの飲み食いの領収書をスクラップブックから拾い集めることにした。
裏に記載の同行した人や社名をピックアップしていった。
男の営業成績と照らし合せてみたのだ。
男が言っていた、お互いにお酒を飲み交わしてこそ仕事に繋がる、それを調べてみた。
その結果、事務員の怒りは頂点に達した。
男が会社の経費を散財している先はあのエンジニアと東の海システム会社であった。
それらは会社のお金を散財するほどの利益をもたらしてはいない。
明らかに個人的な付き合いでの使途である。
領収書の裏書きを見る限りでも大方の予想はついていたが、こうして一覧になったものを目の前に置くと、怒りがこみあげるばかりである。

事務員は男が疫病神のように思えて仕方がなかった。
事務所の中、ドアの後ろ、男の目に触れないように、そっと盛り塩を置いた。
お清めの塩である。