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君のブログに恋をして〜1回めの交渉編

著者:馬詰道代
公開日:2018/01/28
最終更新日:2018/01/28
カテゴリー:フィクション

「ふぅ・・」
小さな事務所の中で男はため息をついた。
あたかも自分がトップのように、思うように動かせていた今の会社。
どこで歯車が狂ったのか、居心地の悪さしかない現状。
このまま、あの会社に身を置くことは俺のプライドが許さない。
ここはグッと堪えて、この小さな事務所にスライドするのもひとつかもしれない。
この業界ほど俺に合っている場所はない。

相変わらず、我が身を振り返らない男であった。
今までどこに身を置いても、長続きしなかった。
このSES営業で成り立つ業界は同業他社との繋がりが大事である。
この業界の営業に足を突っ込むと、そこから逃れなくなる。
会社の居心地が悪くなっても同じ業界の他社に転職し、何食わぬ顔で以前の職場で繋がっていた他社の営業と仕事ができるのだ。
ある種、特殊な世界である。

目の前に座っているかるてるのボンクラ営業も転職組である。
男より3つ4つ年下である。

年下に先輩ヅラされるのはシャクに触るが、この際それも仕方ない。
いずれ俺の営業力を見せつけてコイツより上にのし上がってやる。

「ちょっと相談したいことがある」
と男は切り出した。
「実は今の会社を辞めたいんだけれど、ここで雇ってもらえないか、社長さんにお伺いを立ててもらえないかだろうか?」
この業界でありがちな話に、かるてるのボンクラ営業マンはさして驚きはしなかった。

男が帰ったあと、かるてるのボンクラ営業マンは思案した。
明らかに自分より推しが強いあの男が入社すれば、自分の営業としての立場がなくなる。
自分の居場所がなくなる。
実際に営業を2人雇うほど、会社に余裕があるとは思えなかった。
わざわざ上に話すほどのことではない。

この話は一旦は流れた。
男は仕方なく、しばらくは居心地の悪い会社で我慢することにした。
営業経費の申請書を書くのは面倒であったが、いずれこの会社を出て行くために、その手土産として味方を作っておかなければならない。
営業のことなんて、代表も事務員もわかっていない。
代表がやっていた営業なんて緩い。
それなりに適当な理由をつけて申請書類を出せは営業経費を使える。

以前に比べるとお金の使い方がいく分大人しくなった男ではあった。
申請書類も提出している時点で目くじらを立てるわけにもいかず、事務員は営業経費については静観していた。
男は営業を理由に直行直帰で会社に姿を見せることが少なくなってきた。
ドアの後ろに盛り塩をするほど、嫌悪感しか感じない男である。
事務員は直行直帰で男の姿を見ない日は安堵した。

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