君のブログに恋をして〜似た者同士編

かるてるのボンクラ営業マンと違って押しが強い男は、かるてるへの転職を諦めきれずにいた。
男は自分がこうと決めたら、その考えだけに染まる傾向が強かった。
多分に柔軟性に欠け、周りを巻き込んでいくという、男にはそんな悪い癖もあった。
教祖と崇めているあのエンジニアに相談を持ちかけた。
自分の考えに共感し、力を貸してくれるに違いない。
男はそう思った。

押しの強さでは、男を上回るエンジニアである。
自分から男を飲みに誘ったとしても、一切お金を出さないエンジニアである。
他人のお金を使う点においてはエンジニアと男は共通していた。

いつものちゃんこ鍋屋”おにぎり”に2人はいた。

「何もお土産を持たずに転職を持ちかけても無理。まずは自分の力を見せてやれ!」
「力ですか」
「自分を雇えばどれだけの利益を会社にもたらせられるかを見せてやれ」

その日、男は最終電車に間に合うよう、お酒が入ると度を越すエンジニアを置いて、家路に着いた。
男が帰ったあと、エンジニアは酔った勢いでおにぎりのママさんにちょっかいをら出したのだ。
嫌がったママさんは足を滑らせて、机の角で顔を打ってしまった。
顔にアザができてしまった。
エンジニアも男と同様、自分の行いを反省するという思考に欠けていた。
お店の看板ママさんの顔に傷をつけたのである。
たとえ、酔っ払っていたとはいえ、誠意を持って謝罪すべきである。
結局、その件はお互いに弁護士を立てて処理する事態にまで発展した。
そのことがあってから、男はエンジニアを連れて、そのちゃんこ鍋屋おにぎりには行くことがなくなった。
男は会社にちゃんこ鍋屋のピンクの領収書を出し辛くなっていたので、内心、安堵した。

酒癖の悪いエンジニアは、あるとき、飲み屋で携帯電話を紛失した。
そのことで、男は事務員に「エンジニアと連絡が取れないと困る。会社から携帯電話をエンジニアに貸与して欲しい」と言ってきた。
事務員は耳を疑った。
いち個人事業主のエンジニアに、会社から携帯電話を貸与する意味がわからなかった。
そこまであのエンジニアを優遇する意味がわからなかった。

男のエンジニア信者っぷりが目に余ってきた。
男の延々と続く、エンジニアに携帯電話を貸与する理由を遠くに聞きながら、この2人に会社を私物化されるのはまっぴらと思う事務員だった。
その後、エンジニアの出入りを禁止する業務命令が下された。

ことごとく自分の思い通りにならなくなってきた。
男はますますかるてるへの転職を模索するのであった。