君のブログに恋をして〜センスがない言い訳編

他人のお金を使うことに何の躊躇もしない点では、教祖のように崇めている
エンジニアの方が男より上まわっていた。

一度、こんなことがあった。
まだ、経費精算に大らかだったころである。
男の会社に新しい営業が入社していた。
営業初心者の20代の男性である。
その若手が初めて成約したときのことである。
そのお祝いをしたいとエンジニアの方から声をかけてきた。
男は事務員に
「お祝いをしてくれるらしいが、万が一のことがあるので営業経費の仮払いをしてほしい」
と言ってきた。

お祝いをしたいという話を出したのはエンジニアである。
その電話を横で聞いていた事務員は、(言い出しっぺが支払うのが筋)と思いつつも、お金を預けた。
翌日、案の定、男はその領収書とお釣りを出してきた。

事務員はその若手社員に確認した。
若手社員の話はこうであった。
レジ前に向かった3人。
レジ前であのエンジニアが払うものかと思っていた様子の男だったが、いっこうに財布を出そうとしないエンジニアだった。
仕方なく男が支払っていた。
若手社員は
「僕のお祝いをしたいとの話だったのですが、あのエンジニアさん、財布、出さなかったんですよ」
と首を傾げていた。

社員の成約のお祝いに会社がお金を出すのもおかしな話である。
事務員も反省した。
この頃から男の営業経費の使い方に不信感を抱き始めた事務員であった。
のちにあの不正領収書事件が発覚したのである。

営業経費を使うのはほとんど男である。
事務員は男が入社してからの営業経費、いわゆる飲み食い代を洗いざらい拾い上げ、一覧を作ってみた。
頭の中で予想はしていたが、数字として明確に示されると、あまりのバカらしさに、笑いを通り越して怒りを感じるのであった。
月一回の社内会議の席で、男の自尊心を損ねないように、営業経費の使い方について言及した。

「言い訳をさせてください。あのエンジニアと行くときは暗黙の了解でうちが出すことになっているんです」
と、不貞腐れた面持ちで男は言い放った。
暗黙の了解、誰の了解を得たというのであろう。
事務員は呆れ果てて言葉を失った。
それでも、格好をつけたがる男の自尊心を刺激しないよう、その場を納めたのだ。

不正領収書、ピンクの領収書、経費の申請制導入、居心地の悪い社内、男はますますかるてるへの転職を模索するようになっていくのである。