君のブログに恋をして〜かるてるをめぐる人々編

事務員に逆ギレしたあの一件以来、会社に居場所が無くなった男は、かるてるの事務所に入り浸った。
かるてるの管理部門を担っている取締役がいないときを見計らって、男はかるてるの事務所で仕事をした。
かるてるの営業をしている男の存在は、その取締役も認識している。

かるてるの取締役は言うなればお目付役である。
代表とは古くからの知り合いである。
かるてるを作るとき、いくばくかの資本金も投じた。
かるてるの経営陣は表向き、代表とこの取締役となっていた。
その実、代表の妻と娘も取締役として登記されている。
娘にいたっては、嫁ぎ先の名前に変わってもなお、取締役として変更登記されているのだ。
名ばかりの役員なのである。
幾ばくかの役員報酬も出ている。
かるてるの管理を担っている取締役は、少なからずこの件については不服に感じていた。

そんな不服の矛先がボンクラ営業マンに向けられるのだ。
営業とは名ばかりで大した成約も取れず、40万円もの給与を支給している。
採用活動と手作り名刺、年配の取締役が苦手なWebサイトの構築やSNSぐらいがボンクラ営業マンの仕事である。
ボンクラ営業マンはパワーポイントで会社案内を作った。
ボンクラ営業マンの営業ぶりに似た、ロゴのピンボケ具合が際立つ会社案内に、取締役はため息をついた。

ボンクラ営業マンはこの取締役が苦手だった。
男もボンクラ営業マンと同じように、この取締役が苦手だった。

男は
「今日はそっちで仕事したいんだが、取締役はいてる?」
とLINEで確認を取ってから、かるてるに向かった。

かるてるの代表と取締役は、男がかるてるの営業をしていることについては、口座を貸しているだけというスタンスを貫くことに決めていた。
あくまで、ボンクラ営業マンと男が勝手にやっていることにしたかったのだ。
会社ぐるみで、同業他社の営業マンに営業をさせるというのは道義的に問題である。

男が成約した案件と技術者については、請求書等事務処理は、ボンクラ営業マンと男に任せた。
取締役はお金の管理だけである。
あくまで、男の窓口はボンクラ営業マンである。
問題が発覚したときには、会社は知らぬ存ぜぬを通すつもりであった。

男はボンクラ営業マンの友だちである。
かるてるの取締役は、男のことも同じようにボンクラだと思っていた。
最初の月に5件も成約するとは想像をしていなかったのだ。
軽い気持ちで口座貸しを考えていた。
それはボンクラ営業マンも同じだった。

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