電子書籍で『一人称単数』を読んでみた。

文庫本が好きです。
 お手頃なサイズ、お手頃な価格、丸ごと手に収まる感覚がたまりません。
 実は一番好きな本は辞書です。
 中身より紙質が好きなのですが。
 学生の頃、あのペラペラの紙に赤鉛筆でラインを引くのが好きでした。
 ラインは赤鉛筆でないといけません。
 本というのは、内容もさながら、モノとしての存在が魅力です。
 装丁、とくに表紙のデザインで食指が動くときがあります。
 装丁で選ぶとなると文庫本より単行本、ハードカバーになります。
 しかし、ハードカバーの単行本は持ち運ぶには少々大きくて持て余してしまいます。
 通勤鞄に忍ばせるには場所を取りすぎます。
 書き下ろしや連載を集めたものはまず単行本で刊行され、そのあと、少し手直しなど施され文庫本となり書店に並びます。
 私は気になる作家の新刊が出たとき、単行本を買うか、文庫本になって書店に並ぶのを待つか、選択を迫られ悩みます。
 先月、村上春樹氏の『一人称単数』が刊行されることを知り、単行本で買おうか文庫本になるまで待とうかと考えあぐねました。
 そうして、どちらでもない電子書籍にしました。
さて、今回買ったKindle版。
 家で読むときはiPad miniで、通勤電車ではiPhone11Proで読みました。
 電子書籍、何が良いって知らない文言がでてきたとき、その該当箇所をタッチすると辞書ツールが出てきます。
 その場で調べることができるのです。
 いつもは調べたい文言をスマートフォンにメモして、あとでググるのですがその作業が面倒です。
 なので、前後の流れでこんな意味だろうと読み進めるわけです。
 また、ここまで読んだよ印のしおり機能も連携されるので、iPad miniで読んだ続きからiPhone11Proで読み始めることができます。
 何より鞄の中に本を忍ばせる必要がありません。
 スマートフォンが本になるわけです。
 便利です。
 これまでもたまに電子書籍で本を読むことがありました。
 それはKindle版が無料でダウンロードできるよ!みたいなキャンペーンのときや、ことりっぷで旅の本をiPad miniで眺めたいときです。
 読みたい!気持ちがそんなにもなかったものですから、そのまま放置し電子書籍の電子書籍たるものを堪能し損なっていました。
今回、やっと小説1冊、読了です。
 電子書籍、なかなか良いです。
ただ、量感が掴めません。
 どれぐらい読んだとか、あとどれぐらいで終わるとかが感覚として伝わってきません。
 全体のどこにいてるのかがわかりません。
 これはGoogleマップで移動しているのと同じ感覚です。
 Kindle版では何ページ分の何ページを読んでいるとか、このペースで読み進めるとあと何分で読み終えるとか表示がされます。
 これも、まさにカーナビです。
 目的地に着く予想時間を知らせてくれますが全体のどこにいてるのかが読めません。
 私は全体を見て、今の立ち位置を確認しながら進まないとなんだか気持ちが落ち着きません。
 迷子になりそうな気分になります。
 また、感覚で生きているタイプの私は見た感じ、持った感じ、触った感じ、これらを感じることができないので面白くありません。
 そして、最後、読み終わってパタンと本を閉じたいのですよね。
 ぁあ、読み終わった!と思いたいのです。
 このあたりに物足りなさを感じる電子書籍です。
 といいつつ、使い分けて今後も利用したいと思っています。
長々となってきました。
 それでは、ここらで『一人称単数』(著者 村上春樹氏)について、軽く触れておきます。
 今回の『一人称単数』は8篇のお話で構成されています。
 いわゆる、短編集です。
 私小説風です。
 タイトルになったお話以外はどこかの文芸雑誌で発表されたもののようです。
 私が一番好きなお話は猿が出てくるものです。
 現実と空想の狭間でウロウロする面白さです。
 私が村上春樹氏の小説で好きな点は、大人の読む絵本的なところです。
最後に、
 今回、Kindle版で買った『一人称単数』。
 単行本と電子書籍の金額差は150円でした。
 電子書籍の金額はどうやって決めるのか気になります。
 弊社でも自社出版の書籍を2冊、出しています。
 紙の本(プリント・オン・デマンド)と電子書籍(Kindle版)です。
 『小さな会社の情報セキュリティ』と
 『速習!ワードプレス 高速化テクニック!』です。
 紙の本の値段を基準にして電子書籍の値段を決めたのですが、まぁ、ええ加減です。
 このあたりプロはどうやって決めるのでしょうか。
 気になります。
そうして、長い夏季休暇も終わり、今日からリスタートです。

